(8話)されど紛い物は悪運と踊る…(√ーA最終話)
最終更新: 2018年12月30日
残された者は瀕死の
【闘う意志なき者に討つ価値なし。貴様…先程から妙に、我と……そうか!
貴様は…クハハハ!この"紛い物"め!
クハハハ!】
"紛い物"と
「クハクハうるせぇよ、脳筋バキバキの変態ゴリマッチョマンが…」
顔面に銃口を押し付けられても不敵に嗤う
"闇の拳闘士"
のみ。
「その荒れた顔を…吹き飛ばしてやる!」
ー ガキィ! ー
無茶な戦闘を繰り返し、ついに装填機構部が破損してしまう…ファイヤーアームズは既に燃え尽きていた。
「…ぁ。…アン、ラッキー?」
【勝機!!我の拳に沈めええええ!!】
唸る豪拳は相手の顔面を捉えた。
「…Not!アンラッキィ、ってなぁ!」
咄嗟にパレットを操作しながら身を屈めパンチをやり過ごす。腕が延びきった所で懐に飛び込み、エルダーの右腕を足掛かりに三角飛びの要領で顔面に取り付いた。すかさず、腰裏に装備したもう一つの相棒を取りだしスライドを引く。
【なんだと!!えぇい脆弱なる者が我から離れよ!】
「こいつぁ、ヤスミノコフ3000Rって言う大型自動拳銃さ。不思議なことにコイツは"散弾"や"榴弾"まで使える便利な代物なんさ…どうやって使うかうって?」
早口で捲し立て…
ー ゴリィ! ー
顔面の発光部に銃口をめり込ませ、
「こうするのさぁ!」
引き金を引いた。
何度も、
何度も、
「全弾もってけ、釣りは要らねぇよ」
何度も、
何度も、
「ほれ、遠慮すんなよ…グレネードのお代わりは如何かなぁ?」
至近距離の爆風と弾けた榴弾の破片が両者を焼き、引き裂いていく…それでも、麗舞は引き金を引き続けた。
【ウグゥオオオオオオ!!】
「ハードラックで…ゴフッ!…ダンスっちまったら…"英雄"にゃ…ハァ、ハァ…程遠い、よなぁ」
愛銃、ヤスミノコフ3000Rと戦闘機隊の執拗な攻撃により、両者の姿は炎と煙に包まれ見えなくなった。
一瞬、戦闘機隊の爆撃が止むや否や、今度は艦隊からの総攻撃により、辺りは激しい閃光に見舞われ…それが止み、煙が晴れる頃には、両者の姿は何処にもなかった。
かくして、ここにアークス船団初の一大総攻撃によるダークファルス撃滅作戦は…
轟沈…37隻
被撃墜…675機
死亡者…16423人(内、民間人…4562人)
行方不明者…集計不能
凄惨たる犠牲と、一人の"英雄"による挺身の果てに終結した。
ー 嘘つき ー
ー ごめんて…でも、守れたろ? ー
ー 酷い人… ー
砕け散った戦場の跡に、様々な破片と一緒に漂う人だったモノ…その骸を包む赤黒い光。
【あぁあ……派手にやられたもんだ。まさか、こうも早くやられちゃうなんてね、来るのが遅かったよ。我ながら酷いもんだねぇ…いっちょ前にやりきった顔してらぁな。まだ、終わって貰っちゃあ困るんだけどなぁ…そうだろ、観測者さん達よ?】
塵と瓦礫が漂う星の海に声が静かに響いた。
【セカイの中心たるキミが居なくなっちゃ困るんだ……でもこの世界はここまでだね。キミの渇望も無念も、ボクが受け継ぐから。ゆっくりおやすみ、麗舞】
【……今度は死なせない】
星の海に静寂が訪れ…赤黒い光が名残惜し気に漂い消えた。
ーーー どうしたの? 貴女……泣いてるの?
ーーー え?……あれ、なんで?わからない、でも…
ーーー なんだか悲しい。大切なものが無くなった……そんな気がするの
ーーー おかしいよね。誰も…死んでなんか居ないのにね
【√ーA 完】
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