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  • 執筆者の写真麗ちゃん

閉じた世界【√ーA】


(7話)深遠なる闇の眷属【巨躯】ー後編ー

最終更新: 2018年11月24日



ー 新光歴 238年 4月 1日 後退ポイント 33-6-D地点 12:40 ー



後退ポイントに着いたと同時に船団からの攻撃が始まった。


「始まったわね」


沈黙したエルダーに向かって、幾筋ものレーザー、ミサイルの軌跡が伸びていく。


 エルダーの強固な体表面を何度もえぐり、爆発し砕く、それが幾つも重なり巨大な岩山を積み込んだ。


「…すごい。あれじゃ流石のエルダーもひとまりもない」


ダメ押しと言わんばかりに、戦闘機隊による執拗な爆撃。


 暗い宇宙に一際、赤く紅く…燃えていた。


「…さぁ!みんな、今の内に装備の確認を!」


マスター・ミユの号令で一斉に武器や防具…補助アイテムの補充を済ませていく。周りに遅れないように…


「ボクも始めないと」


手早くファイヤーアームズを分解して簡易清掃して再び組み立てる…念のためにシリンダーは替えておくか。


「ボルトのスライドはっと…ほんの少しガタあるな、装填は…よし、排莢は…、なんか…いつもの感じと違う気がする、なんだ?


 …帰ったら、またオーバーホールしてやるから、もう少し頑張ってくれな「へぇ、結構使い込んでるねぇ、そのコさ」…マキナさん?」


愛銃の手入れをしてると、マキナさんが話し掛けてきた。


なんだか、目がキラキラしてるような?


「今時、火薬式でしかも『ボルトアクション』のみなんてさ!潔いよね、君のソレさ。


 ねぇねぇ、ちょっと貸してくんない?」


と言うや否や、マキナさんは流れるようにボクの手からファイヤーアームズを取り上げる…あ、そんな片手で。


重たいから無理だ…よ?


「…嘘、片手で持ってる。どうして?」


「ふふん、それはこの腕輪のお蔭さ!パワーアシスト機能が着いてるから、どんな重たい武器でも片手でこの通りなんだ!


 それより、中々良いよこのコ…よく手入れされてる。かなり使い込んでるよね、グリップの塗装が剥げるまでなんて、滅多に見られないよ?


 確かオートマチック機能も着いてた筈だけど…ふぅん、取り回しを考えて敢えて排除したって感じかな?


 フルオートや3点バーストでの面制圧はソッチを使ってるんでしょ、マントの下のヤツをさ♪」


「ッ!?」


「ねぇねぇ、ソッチのコも見せてよぉ?


 なぁに、悪いようにはしないからさぁ」


こりゃ見せるまで引き下がらないなぁ…しかし、軽く外観を見ただけで分かるか。


 このコもやっぱり…"特別"か。


「…わかりましたよ、丁寧に扱ってくださいね?」


「勿論だよ!はい、このコは返すね。


 うっはぁ、やっぱそうじゃないかと思ったよ!」


ファイヤーアームズと交換で、マントの下からもう一丁の愛銃を渡す。


「ヤスミノコフ3000R!


 最近、めっきり使い手見なくなったけど…いやぁ、良いよ、最高だよ!


スライドも、バレルも…うん、バッチリ!


 両方共、外観には細かい傷が多いけど機能には影響なさそうだね、勲章だよ。


ただ、ファイヤーアームズはそろそろメンテかなぁ…無理させなきゃ大丈夫だろうけどね。


 まさか、クラフトしてまで使ってるなんて…よっぽど好きなんだねぇ」


そう言ってマキナさんはヤスミノコフを返してくれた。


「…まぁ、好きなのもありますが、クラフトせざるを得なかった、と言うか…」


レアリティの高いのは、弱い自分じゃ掘り当てられなかっただけ…。


「…?まぁ、この戦闘が終わったらウチのラボに来なよ!メンテしてあげるからさ♪


 なぁに、おやつくれたお礼に格安で新品以上の逸品にしてあげるよ!」


「…お金、取るんですね…あはは」


「お得意様は多いに越したことはないよ。


 任せてよ、手抜きは一切しないからね!」


そう言って人懐っこい笑顔を浮かべてる。


ここにも"お人好し"が1人。


「はは、ならお言葉に甘えますよ…」


「へへっ、毎度ありー♪」


そうこう、してる間に数分にもおよぶ艦隊攻撃が終わろうとしていた…エルダーはどうなっただろう?


「そろそろ終わるね…あれだけバカスカ撃ち込んだんだし、ね?」


「倒した…と、思いたいですね。」


マキナさんと一緒に爆炎に包まれたエルダーを見ていた。


すると…


「あぁ!…崩れていくよ!やった、やったよ!」


「おぉ…見事にバラバラになってくなぁ。これは勝負あり、だな」


「やりましたね、お姉様!


さぁさぁ、デート!ランチデートしましょ!」


「おぅ、ちょお待ったれやぁ小娘ぇ…ウチもお供しますえ、ヴェルデはん♪」


「ちょちょ、リモーネ!?アルちゃんまで!?」


「おー、たーまやー…すやすや、ハッ!?


 きたねぇ花火だ。キリッ」


「打ち上げならアタイに任せなぁ!


祝砲だぁあああ!!」


「…ッ。(……うるさい…でも、嫌じゃない…みんな、無事)」


「いやぁ、派手だねぇ!なら私も一曲いっちゃう!?」


エルダーの巨大な体がボロボロと崩壊していくのを見て、みんながそれぞれの勝どきをあげる…ボクも祝いの空砲でも……あ、ないや。


「これで終わりのようね…お疲れ様、レイさん。貴女のWB…助かったわ」


そう言ってマスター・ミユが近づいてきた。


あ、素晴らしいです、その下乳…おっと。


「いえ、ミユさんこそ…見惚れましたよ」


「えっ!?」


「その剣技…お見事でしたよ」


「…あ、あぁ!そう、よね!?…ありがとう♪あはは、ハァ…」


…どうしたんだろう?まぁ、いいか。


 そろそろ、作戦終了の通達が来る頃なんだけどな。


皆が和気あいあいと、撤収作業に入ろうとした最中…【ソレ】は現れた。


背びれの様な紫色の翼


手には一振りの大剣


【クハハハ…アークス達よ、よくやったと誉めてやりたいところだ。


 しかし…まだまだ付き合って貰おうぞ。


この闘争に!


このファルス・ヒューナルになぁ!】


ラスト・ダンスはまだ終わっていなかった…。



ー 新光歴 238年 4月 1日 総合作戦司令室 12:44 ー



誰もが正面の投影パネルに写し出された燃える山…エルダーの様子を食い入る様に見ていた。


『艦隊攻撃終了まで残り10秒…5・4・3・2・1…攻撃終了!


 全艦、砲撃体制のまま、待機せよ!


戦闘機隊は着艦し随時、補給及び整備にかかれ!


繰り返す……』


「これで片が付けば良いが…ダークファルスの反応はどうか!?」


「依然、フォトン粒子の濃度が高く反応不明!


 間もなく攻撃による閃光が収まります!」


「…偵察機発進!目視確認を急がせろ!」


「了解!」


張り詰めた空気が司令室を包む。


誰もが疲労の色を伺わせていたが、目は死んでいなかった。


『こちらアロー1、対象を目視にて確認。』


「了解、アロー1。対象に動きは見えるか?周囲に異常が無ければ、さらに近づいて確認せよ」


『アロー1、了解。……周囲に異常なし。これより高度を下げ旋回する。


…これは!?』


「どうした、アロー1!何があった!?」


『…た、対象が崩れ、て…ほ、崩壊していく!


対象が崩壊を始めた!


繰り返す!


対象が崩壊を始めた!


ハハッ、ヤツはバラバラだ!』


「フォトン粒子の濃度、正常値…ダークファルスの反応…ありません!!」


「良し。諸君、聞いての通りだ…我々の勝利だ!」


ーー ワァアアアアアアアア!! ーー


弾かれたように歓喜の声が上がる。


軍帽や書類を投げる者、隣同士で抱き合う者、静かに喜びに涙する者…それぞれが喜びを噛み締めていた。


 喜びの様子を通信越しで聞いていたたパイロットが痺れを切らして割り込んだ。


『おいおい、盛り上がるの良いが…早く帰投命令出してくれよ?嫁さんがパインサラダ作って待ってんだからよ』


近場に居た女性通信士が笑顔で応答する、いつの間にか口調も普段、話すような柔らかさになっていた。


「フフッ、ごめんなさいアロー1。直ちに帰投して…パインサラダを堪能して頂戴♪」


『…了ぉ解!アロー1、直ちに帰投す…ん、何だありゃ。


人型…人型だ!


司令室!


瓦礫の中から人型が現れた!


こ、こっちへ向かってくる!振りきれない!』


「アロー1、どうしたの!応答して!アロー1!アロー1!?…ッ!この反応…ダークファルス!」


甲高い悲鳴にも似た声に周りの空気は一変、どよめきと困惑の渦が巻き起こる。


「司令、大変です!アロー1との通信及び識別信号が途絶…恐らく撃墜されたものと。


併せて、ポイント 33-6-D 地点にダークファルスの反応、先ほどのダークファルスと同じ反応です!」


「なんだと!?…我々が倒したのは、ただのハリボテだとでも言うのか」


「そのポイントはアークスの退避でもあります!現在、遭遇戦に陥っています!」


「いかん、直ぐに応援のアークスを派遣し退避の援護を!戦闘機隊は直ちに急行、ヤツをその場に縫い付けろ!全艦、砲撃照準合わせ『その必要はない』…貴方は!?」


矢継ぎに命令を飛ばす司令官に割り込む若い男の声。


正面の投影パネルに写る、その男は…。


『私は虚数機関、総長のルーサーだ。


全艦及び戦闘機隊に告げる…


直ちに攻撃せよ。


繰り返す…


直ちに攻撃せよ。


彼らは我々の未来の為、その身を捧げたのだ…無駄にしてはならない!


今こそ、闇の支配者ダークファルスを倒すのだ!』


「…ッ!?(どうなっている、司令官すら聞かされていないなど。麗舞…、何とかして逃げてくれ!)


…ブリギッタ、少し頼みがある。


 飲み物を入れてきてくれないか?…熱いコーヒーが良い、砂糖は3つ…ミルクポーションも3つだ。」


「わ、わかりました…行ってきます」


「……」


困惑に揺れる司令室をヒルダは足早に後にした。



ー 新光歴 238年 4月 1日 後退ポイント 33-6-D地点 12:48 ー



その闘いは苛烈さを極めていた。


「こんのぉ!…さっきナベリウスで戦った時より強いやないの、それに…WB使ってもアホみたいに硬いやて!?」


「これは一筋縄じゃ無理かもしれない…けど今度は人型!みんな、落ち着いて囲んで!


 それとダッシュ斬りと連撃、飛び上がりからのキックは直線的よ、ステップやロールで回避して!


 地面を走るエナジーフィールドの範囲攻撃には冷静に軌道を読めば避けれるわ!」


「かまるさん、スイッチ!私が前に出るよ、ハァアアアッ!」


「おぅよ、あやこちゃん!」


ブレイバーによる幾筋もの剣線がエルダーに襲いかかる


【クハハ、そうだ。もっと来い、もっと楽しませろアークスよ!


剣には剣で応えようぞ…行くぞぉ!


オォォォッ!】


負けじとエルダーも身の丈はあろう、大剣を軽々と振り回し襲いかかる。


「まともに打ち合っちゃダメだよ!援護は任せて、行くよ!リモーネ!」


「はい!お姉様、アレをやりましょう!」


「えぇ、良いわよ!」


「4人共、下がって!」


「「「はい!」」」


「おぅ!」


エルダーの連撃をかわし、プリマヴェーラ、リモーネがエルダーの前へ躍り出る。


舞うように、左右の立ち位置を替えながら銃弾の雨を浴びせていく。


「タイミングを合わせて、いくよリモーネ!」


「はい、お姉様!ここは私達の間合いだ、外しはしない!」


「「ツイン・レガーメ!」」


「ストライク!」


「バレット!」


エルダーに近づいては離れながら二人は踊る、軽やかなステップを踏んで。


一発も外れる事はなく、銃弾はエルダーに吸い込まれていく。


【グオオオ!?小癪なぁああ!】


堪らずエルダーが怯み膝をつく。


「私達も負けてらんないね、りっふぃも出るよ!さっきのアレ、いける!?ウィスちゃん!」


「ッ!(…できる、指示は…出すよ!)」


「よぉし!…アタック!」


「…見様、見真似」


「ストライク!」


「バレット…」


【ガアアアアアアアアッ!】


リフィア、ウィスタリアも後に続く。先の二人の動きを完璧にとはいかないまでも、二人は一度見た動きをトレースしていた。


エルダーは膝をついたまま沈黙して…


【グゥ…ガハッ!】


倒れた。


「え、嘘…私達、倒しちゃった…の?」


「まだ油断は出来ません、お姉様」


全員がエルダーから距離を取り、様子を伺っていると。


『麗舞、生きてるな!


 すぐにその場から退避しろ!


艦隊はお前達諸ともダークファルスを吹き飛ばす!』


ー !? ー


自身が装着しているインカムからプライベート通信で発せられた事実に、麗舞は少し硬直し声を荒げてしまう。


「そんな、バカな!そんな命令、聞いてませんよ!ヒルダさん!?」


『私にも見当がつかん、どうやら司令官すらも寝耳に水らしい…』


「一体…どうして」


「…何があったの?レイさん」


ミユの問い掛けに手で制止し通信を続ける。


『ルーサー総長だ、虚数機関の。アイツがいきなり作戦に割り込んできた。


お前達を"英霊"に仕立て上げるつもりらしい…理由はわからん。


とにかく、早く避難しろ!どこでも良い、時間がない!……クソッ』


言うや否や、唐突に通信が切れてしまう。一体何が起こってる?


 ヒルダ通信士長の慌てようと、周りを気にしてる風な小声…やけに早口な


口調に麗舞は困惑するのみだった。


そして、気掛かりな名前…。


「ルーサー…なんでアイツが?…どうなってる……」


「レイさん、どうしたの!教えて頂戴!?」


痺れを切らしたミユの声に思考が停められる。


今は一刻も早くこの場から…


「…逃げましょう、皆さん。今、ヒルダ通信士から連絡がありました。


落ち着いて聞いてください、艦隊は今すぐ再総攻撃すると言ってきました、なので一刻の猶予もありません、手近なアークスシップへ避難をしましょう!」


「どういう事や!?ウチらも纏めてやるつもりなんか!?」


「おい、貴様!何故、私達に連絡が来ない!?」


「…君にだけに連絡が来たって事は、レイさんを除く俺達は…"捨て駒"にされたって事…かな?」


愛鷹丸の言葉に、皆は麗舞に向けて武器を構える…ただ、二人を除いて。


その18の瞳は、怒りの色、非難の色…様々だった。


「何をしてるの、止めなさい!?」


「…ッ!?(ダメ!…違う!)」


「ち、違う!!そうじゃない!そんなつもりは…ッ!?


伏せろ!!」


咄嗟に火を吹くファイヤーアームズ


刹那、轟音と共にこちらに向かって、回転しながら飛来した大剣が軌道をそれ皆がいた場所から大きく外れる。


【愚鈍!!隙を曝したな!】


エルダーは一際、大きく跳躍し地面さえ砕かん勢いで蹴りを放つ。


「ちぃっ…散開ぃい!!」


「…ぁ」


反応が遅れたセレナータが回避を始めるが、エルダーの蹴りは彼女を捉えている…


「…ッ!!(セレスちゃん!!)」


必殺の一撃がセレナータを襲う。


回避は…不能。



ー 新光歴 238年 4月 1日 後退ポイント 33-6-D地点 12:58 ー



「んなくそぉ!」


麗舞は後方にロールし着地した瞬間、無理やり軸足で踏ん張り、地面を蹴り砕いて前へ駆ける。


 エルダーへ銃撃をしながらスライディングでセレナータの側へ、起き上がりながらの回転蹴りでセレナータをウィスタリアの元へ蹴り出す。


 


「キャッ!?」


「…(セレスちゃん!)」


刹那。


ファイヤーアームズのフレーム部でエルダーの蹴りを受け、地面に倒される麗舞。そのまま地面を抉りながら、後方まで滑る。


「れ、レイさぁあああん!?」


勢いが無くなり、足下に倒され全身を抉られ満身創痍の麗舞を一瞥し、振り返るエルダー。


 両手を広げ、誇らしく、雄大に吼える。


【……。脆弱なり、アークスとはなぁ!クハ、クハハハ!「俺もコイツも結構な頑丈さでねぇ!」ヌゥ!?】


後ろを振り返るエルダーの顔面に銃口を押し付け、今度は麗舞が吼える。


「おっと、動くんじゃねぇよ…お肌ゴリゴリの変態岩男が!!


この距離ならスコープなんざ…要らねぇよ?


こいつぁ、『ファイヤーアームズ』って大口径ライフルさ…初速は楽に音速を越えるんだ、すげぇだろ?


お前の…そのガチガチに荒れた顔なんか、木端微塵だぜ…試してみるか?」


【クハハハ、面白い!やってみろ、その玩具でな!】


「ダメだよ!キミだって、そのコも!


そんな状態じゃ無理だよ、逃げて!」


思わずマキナは叫ぶ。


 そんなボロボロの"身体"で何ができるのかと。


【どうした…撃たないのか?クハハハ…ん?


なんだ、空から…そういう事か、味な真似をするではないか!】


エルダーが上空に異変を感じて見上げた時、周りの地面が弾けた…。


「…爆撃!?不味い、早く逃げないと!」


「どうして、テレパイプが使えないの!?」


「ダメだ、強制的にロックが掛けられてる!」


皆が一様にテレパイプを作動させようとするが、反応はどれも同じ。


【貴様も逃げねば藻屑ぞ?…まだ続けるか?我は構わぬ】


「…へ、気が合うね。俺もそうよ、けどな!」


そう言って麗舞は懐に入れてあるモノを放り投げた。


それは弧を描き…集まった皆の側で作動する。


驚愕の最中、麗舞を見やる…何故と。


何故、作動した?


何故、あの人のだけ?


それを何故…こっちへ投げた?


「それをくぐって早く逃げろ!俺は…私はいいから、逃げてください!コイツは、私が!!」


【クハハハ!見上げた器量よ、そこまでして我と闘争を挑むか…それは勇気か蛮勇か!】


徐々に激しさを増す爆撃、もう地面は穴だらけになり所々で崩壊が始まっていた。


「仕方がない…先に行こう!」


「…見捨てるの!?レイさんを!


私は嫌よ、絶対…もう、あの時の二の舞はゴメンだわ」


「ミユ…」


今までの凛とした態度とうって代わり、ミユは激しく取り乱してしまう。


 その言葉に誰もが言葉を失う。疑念は晴れど…一時的にとはいえ、一緒に戦った"仲間"を犠牲にするなど。


「大丈夫ですって!予備は沢山ありますからね…逃げるのは一番得意なんですよ、私!あはは!


さぁ!早く!……後で会いましょうね」


「…今は彼女を信じよう。さぁ、立つんだミユ…行こう、向こうで待っていよう?」


「…うん。わかった……レイさん!私…待ってるから!必ず…生きて帰ってきて、お願い!」


麗舞は痛みで歪む顔を、精一杯の笑顔に変えてウィンクで応えた。


「…。(守るから…必ず)」


それが…"彼"に出来る唯一の…


嘘だった。


「…(嘘…つき)」


「…(…ごめん)」






【続】


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