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  • 執筆者の写真麗ちゃん

閉じた世界【√ーA】


(6話)深遠なる闇の眷属【巨躯】ー前編ー

最終更新: 2018年11月24日


ー 新光歴 238年 4月 1日 アークスシップ残骸 甲板 12:30 ー


ボク達の周りを取り巻く空気は、すでに大規模作戦中とは思えないくらいの和やかな雰囲気だ。


流されるな…。


「お腹すいたねぇ…リモーネ」


「姉様、帰ったら一緒にランチにしましょう♪」


「もう、かまるさん…作戦中のお酒はダメって言ってるでしょぉー」


「どぅふふははは!!今宵は刃の走りが良き良き!さぁさぁ、次はジャイアント・キリングだぁああああ!!」


「あぁ!?抜け駆けは狡いやないかぁ!ヴェエエルはぁああああああん!私もお供しますぇええ!!」


落ち着け…。


大丈夫だ!


「眠い!お腹すいた!退屈!…レイたんレイたん!


おーなーかーすーいーたーよ!


何かないの!?」


「うぁわっ!?…り、りっふぃさん?食べ物、ですか?…えっと。あっ!」


戦闘着のポケットをアチラコチラ漁っていたら、うっかり煙草を落としてしまった。


「食べ物!?…なぁんだ煙草じゃん、早死にするよ!…あれ、なぁにそれ。ライター?珍しい形だねぇ…マイク、かなぁ。」


「え、あぁ…友人に貰ったものですよ。あっ、カロリーバーのカニカマ味なら…ちょうど三箱♪、一人一個、ですよ?」


素早く、ライターと煙草を受け取り、思い出したかのように、カロリーバーを差し出した。…人気だから中々、買えないんだけど…しかたないか。


「「「「「「「「「カロリーバー!?」」」」」」」」」


「「「「「「「「「カニカマ味!?」」」」」」」」」


「ど、どうぞ…ん?」


袖の端をクイクイと引いてくる…ウィスタリア、さんが…な、なんでしょうか?


「(クスッ…ありがとう、お腹…空いてたから。)」


なんだろう、ボクも釣られて…


「…いぃえ、かまいませんよ。…ふふ。」


笑ってしまった。


「…レイさん。ありがとう。私たち、朝から遺跡調査でずっと出ずっぱりだったから、ほとんど食べれてなくって。本当に、助かったわ。任務が終れば…時間、貰える?御礼は…期待して頂戴、ウフフ」


いきなり背後から腕を回されて、身動きがとれな…せ、背中に当たる感触…これ、は。


「あ、あの…その、困ります…こういうの。みんな、見ていますし…冗談が過ぎます…」


ヤバイヤバイヤバイヤバイ…バレる!!


落ち着け!!俺の『麗舞』よ、静まれ!!


ムニュウ…


出過ぎるなよ!!自重せぃいいいい!


「…ふふ、意外とウブなのね。こんなに綺麗な顔…してる、フゥッ」


耳は反則…。


「…はぅぁっ……あぁああ、もう!?そろそろ、第二次作戦の全体通信ですよ!!ほらほら、気を引き閉めて!!!」


「(……えっち、フン)」


…なんでさ。


ーーー アークス各員に通達 ーーー


ダークファルス【巨躯】が姿を現した。


身を引き裂かんばかりの圧倒的な悪意である…


しかし恐れる必要は無い!


アークス全員の力を結集すれば必ず倒せる!


犠牲を恐れるな!


恐怖を覚えるな!


目の前の敵を討つ事だけを考えろ!


仲間と共に撃ち破れ!


守るべきもの為に!


我らの明日を掴みとれ!


総員に告ぐ…


これこそ決戦である!


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


遂に、大詰めだ…トチるなよ、俺。


これが終れば…また暫く、のんびりできる。やっぱ、アークスは性に合わないや。


「…生きて、帰る」


無意識に呟いた声に、マスター・ミユが反応する。


「そうね、待っている人達がいる限り…私達は死ぬわけにはいかない。」


そう言うや否や、彼女は大きく


息を吸い込み、有らん限りの叫びを上げた。


「絶対に!勝ぁあああつ!!!!


者共ぉおお!死んだら私が許さん!!


皆で帰る!!!以上!」


「「「「「「「「「「おぉおおおお!!」」」」」」」」」」


「…あいよ!!」


《準備はいいな?


転送先は【巨躯】の正面だ…


覚悟を決めろ》


いつでもどうぞ!


《……彼奴も消耗し、体積が減っている。


怯える必要はない。


最初に教えた通りに戦って……


必ず生還しろ。


…必ずだ》


         3


ー 私は、大丈夫だから ー


         2


ー 負けないで、麗舞クン ー


         1


         GO!!




ー 新光歴 238 4月 1日 アークスシップ残骸 甲板 12:34 ー


それは一言で言えば『岩山』だ。


目の前にそびえる、ゴツゴツとした岩の様な体表面、所々から見える赤い発光部と相まったソレは…。


「…火山」


「これで体積が減ってる、の?」


「なんて…大きさ…」


「…ビビんな!!!さっきと同じよ!


赤い発光部を積極的に叩くわよ!」


「はぃはぁい!赤い発光部…多分、アイツの弱点部は頭頂部、4つの掌!


パッと見で分かるのはソコだよ。


怪しいのは、手を組んだまま動いてない腹部…。他にもあるかもしれないよ!」


「よし、三手に別れよう。固まって動くと纏めて潰されそうだ!


 レフトサイドをミユ・あやこちゃん・りっふぃ・マキナちゃん!」


「「「「了解!」」」」


「ライトサイドを俺・アルちゃん・ヴェルデちゃん・リモーネちゃん!」


「「「はい!」」」


「センターバックはウィスタリアちゃん・アザレアちゃん・レイさん!」


「「「了解!(…了解)」」」


【フハハハハ!いいぞ、いいぞ!】


大きく、長い腕をしならせムチのように振るい俺達に襲い掛かってきた。あんなの、当たれば…ひとたまりもない!


「チャンスは必ず来る…今は回避に専念しながら…うわぁっと!?厄介だな、あの腕…何とか壊せないか」


「(…伸びる、腕…赤い発光部…叩く)」


「伸びる…腕」


【どうした烏合…足掻いてみせよ!


仕掛けよ!このエルダーに!


猛る闘争を!】


右手を突き出して…何かの構え?


刹那、エルダーの右腕二本が伸び、左側面のミユ達に襲い掛かる。


「散開!!」


華麗な動きで皆、攻撃をヒラリと交わし


「見つけた!弱点部位!WBぉ!…叩けぇ!!」


マスター・ミユの掛け声と同時に、WBを射出…一斉に反撃に出る。


砕ける音を響かせ、エルダーの腕を2本もぎ取ってやった。


【ハハハ!良き!たぎる!闘争よ!


いいぞ、いいぞ…もっと楽しませろ!!】


「また来る!腕払いは範囲外に逃げれば当たらない、突き出しは落ち着いて避ければ、なんて事はない!レイさん、WBを!」


「スタンバってるよ!今度はかまるさん所だよ!気をつけて!!」


たかだか、腕二本で衰える程、柔じゃないか。けど、パターンが分かれば!


愛銃『ファイヤーアームズ』のグリップを握り締めて、次のタイミングに備える。


外しはしない…


「当ぁあああたれぇええ!!」


ファイヤーアームズの銃口が火を吹いた。


ー 新光歴 238年 4月 1日 総合作戦司令室 同時刻 ー


各アークス達が戦闘を開始した頃、司令室にも動きがあった。


「…我々も見ているだけではない。


彼らだけに負担を強いる訳にはいかぬ。」


司令官は立ち上がり、吼えた。


「全艦、砲雷撃戦、用意!


目標、ダークファルス・エルダー!


主砲及びフォトン粒子ミサイル発射管、全門開け!


後退信号、上げ!


前線のアークス達を後退させよ!


戦闘機隊は砲雷撃と同時に攻撃を開始せよ!」


「了解。各戦闘機隊、発進準備に掛かれ!


各艦の左右両舷に従い、攻撃体制に入れ!繰り返す…」


「……(これがせめてもの、罪滅ぼし…とはいくまい、か)」


「司令、全艦及び全戦闘機隊…準備完了です!


アークスも後退完了です!」


「よし、攻撃開始!


総員、奮起せよ!」


100を超えるアークスシップから、幾多の光が尾を成し伸びていく。


巨大な闇を撃ち払う為。


例え、前線で武器を振るえなくとも…


倒してみせる


撃ち続けてみせる


最後まで


戦ってみせる


そんな気概が満ち溢れていた、


そこに、男も女も関係なかった。



ー 新光歴 238年 4月 1日 アークスシップ残骸 甲板 12:39 ー


ちょうど左腕二本も同じように、エルダーからもぎ取った、流石に奴も心なしかダメージを受けているようで、動きに変化が見られた…。


「沈黙した…?」


「効いてる、効いてるよ!」


「ふふん、これなら倒せるね!流石、りっふぃ、強い…でも、眠い…ぐー」


「あぁ!眠っちゃダメよ、りっふぃちゃん!起きて!もうちょっとだから、ね!頑張りましょ!…ミユちゃん、なんとかしてー!」


「リフィアちゃんは…後でお仕置き」


「に"ゃっ!?」


「…ついでに、あやこちゃんも」


「えぇ、どうしてぇ!?」


「えぇい、お前ら!まだ戦闘中だぞぉ!」


戦闘中にも関わらず、弛む空気に我慢出来ず怒鳴るリモーネさん。無理もない、油断は隙を産む…その結果は



ただ、それだけだ。


リモーネさんが、さらに続けようとしたとき、戦闘区域上空に彩り豊かな閃光が煌めいた…あれは。


「船団からの信号弾…後退、命令?」


「その通りよ、あれは艦隊戦闘でよく用いられる手法よ。通信が悪い状況下や、命令を即実行したい時なんかに打ち上げられるわ。


今回は命令の即事行使…って感じかしら?」


淡々と語るマスター・ミユの目に先程の浮かれた雰囲気はなく、それを見たリモーネさんもまた、真剣な眼差しを送り返していた。


そこに指揮所からの通信が、割り込んできた…どうやら正解のようだ。


《…その通りだ。流石はアークス…と言った所か、まぁいい。


これより第三次迎撃作戦へ移行する。心して聞け。


概要はこうだ、まず前線のアークスは全て後退。アークス各員は別命あるまで待機。各自、装備の確認及び補給を済ませろ。


後退が完了次第、残存する船団から砲雷撃及び戦闘機隊による爆撃を敢行する…最大規模の総攻撃だ。


後退ポイントの座標を送る…速やかに退避しろ!


開始まであと、90秒を切っている…巻き込まれるなよ。


…以上だ》


船団も本腰を入れてきたか、これで終れば良いけど、ね。


「みんな、聞いての通りよ!マキナちゃん、テレパイプの準備!セレナータちゃん、全員の回復を!」


「いつでもOKだよ!」


「響け!癒しの歌!」


「あぁ…安らぐぅ…すやs、起きてますとも!」


「さすが、セレナータはん。傷があっちゅう間や♪」


「うん♪気分一新!これでまた頑張りましょう!ね、みんな!」


いや、ジャンプしながら『頑張ろー♪』とか…あざと…くない、だと!?


そうか…これが天使の揺れかぁ…ディールちゃん、強く…いきて。


なに言ってんだ…あ、なんか悪寒。


「…くぅ、これが母性の差か。なんや不合理やなぁ」


「そこは、貴様に同意する。……私だってせめて姉様くらいには、ゴニョゴニョ」


「(…圧倒的……不利、妬まs…羨ましい)」


「え?え?なに、どうしたの?私、なにか変なこと言ったかな?」


「いえ、あやこさんは…どうか、そのままで、大丈夫ですよ♪あはは…。


それに皆さん、まだ若いですし、これからですよ、これから!ね!?」


まぁ、スレンダーも…それはそれで、おっと。


なんか、見られてる?


「「じぃぃ…、あっ」」


「な、なんですか?」


「「強く…いきて」」


「…(…えっち…なの、ダメ)」


「…どうも(…バレてーら)」


まぁ、男だし無いのは当然だけど…この言い様のない気持ちは、なんなんだろうね…まったく。


それに…こりゃ、完全にバレてるな。


まぁ、敵対するようなマネしなけりゃ、大丈夫だろう…良いコみたいだし。


「ほらほら、姉貴も皆も、無い物ねだりしたって仕方ね「「喧しい!」」うひぃ!?


とにかく、早く後退しなきゃマズいぜ!」


「よし、みんな!早くテレパイプへ!後退ポイントまで下がれば、一旦待機だ。お喋りはここまでだよ、行こう!」


アザレアさんと、かまるさんが皆を急かす。


本当にこのチームは、よく纏まっている…これだけ個性の強い面々が集まっているのに。


今みたいに、すぐ砕けた空気になっていたのに、誰一人流されず…気を緩めてはいない。まるで、わざとやっているような…?


一瞬、マスター・ミユと目が合った…薄く笑みを浮かべウィンク…そういう事か。


参ったな、最初からかなり気を使ってくれてたなんてさ……底が見えないな、このチームは。


袖をクイクイを引き、ウィスタリアさんがボクを呼ぶ。


「(フフ…ここに、貴方の…敵は…いないよ。


…みんな…良い人)」


「…違いないね、お人好し過ぎるくらいにさ♪」


ボクはウィスタリアさんに手を引かれ、テレパイプを潜った。




【さぁ、次はどうする…烏合よ】




エルダーはただ、ただ…不気味に沈黙を守っていた。






【続】


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