久し振りに思うことがあって、書かせてもらおうと思うのです。
Twitterにて、ある方がモデラー同士のやりとりについてツイートされておりました。
『完成しました!』
『完成してませんよ』
『は?』
これでピンとくる方は、模型以外にも何かしらで似たような事を知っているか、経験された方かもしれませんね。
要は、自分では完成した、色々と出来具合に思うことはあれど、満足している物を見せた…すると、ある人にとってそれは【完成した】内に入らないですよ?まだやること残ってますよね、ココとかソレとか…まだ完成してませんよ。
こういうのがモデラー同士の中で最近、多いと
おっしゃっておられました。
昔からあるんですよね、このやり取り。
子供の頃、苦労して作ったプラモをいきつけの模型屋に持ち込んで店長に見せたりしてると、すると横から来るんですよ、ベテラン様達の【ご批評】って言う名の粗捜しが。頼んでもいないのに。
好き放題に粗捜しをして満足したかと思えば、今度は自分が作ったプラモを見せては、プラモを始めたばかりの私には解らない用語を羅列して、如何に自分が凄いのか、如何に私が作ったプラモがみすぼらしくて、見るに堪えない物かを永遠と、講釈を垂れ流す訳です。
まぁ、専門用語が多すぎて話の9割は、鼻くそホジりながら聞いてなかったんですけどね(
【こんなのは○○じゃない】
【○○出来てない、下手だ】
【よくこんな物持ってきたな、恥ずかしい】
【プラモが可哀想だ、模型やめろ】
専門用語や、小難しい言い方されて、わからない子供でも残りの1割で心を抉るのは十分でした。
自分が初めて、はめ込み式から接着式のプラモに手を出して、模型に使うには細いとは言えない絵具の細筆で塗装に挑戦して…手が塗料にまみれ、半乾きのまま触って指紋の跡だらけ、色のハミ出しはそのまま、会わせ目も消してない、爪切りでパーツを切って、合わないヤスリでゴリゴリと削り過ぎてボロボロ…そんなプラモでした。
自分でも下手クソ過ぎだなって思います、汚くてみすぼらしくて…それでも、あの頃の私は満足したんです、自分に出きる精一杯を注いだんです、寝る間も惜しんで。毎日、世話しなく汗水たらして遅くまで働く親に、無理にねだって買ってもらった500円のプラモに。
そんな内情を知らない訳ですから、好きに言われるわけですよ。
もう惨めで、折角買ってくれた親にも申し訳なくて、投げ捨ててやりたくなるくらいになりました。
でも、それを止めてくれたのが店長でした。
その人は私のプラモと、塗料がついたり、カッターで切った手を見てたった一言、【さすが、うちお得意様や、よくここまで頑張ったな。苦労したやろ?】と。
それだけで、救われました。
勿論、粗は指摘されましたけど…それと同じように良い所も言ってくれたし、今後プラモを続ける上での助言もくれたんです。
同じ大人でも、ここまで違うのかと驚きました。
店長の場合は、私の内情をよく知っていたのが大きな違いでしょう。
学校が休みになれば、いつもやって来ては棚のプラモを眺めたり、ショーウィンドーに飾られた様々な模型を、ただ黙って眺めるだけで帰る私を咎める事もせず、好きなだけ居て良いと言ってくれる人でした。
長々と思い出話を綴るのは、この辺にして本題に戻りましょうか。
モデラー同士の例のやり取り、あれは模型世界に限った話ではなく、他の世界にでも目にすることがあります。
例えば…オンラインゲームとか。
苦労して手に入れたアイテム、頑張って撮ったスクリーショット、悩みながらも諦めずに育てた装備…etc
画像1枚には写らない【苦労した】【頑張った】【悩んだ】部分に目を向けることをせず、意図的に、単に粗だけを掘り返して、晒して、悦に浸る【人でなし】がいますね。
人の内情を知らないのは当然で、挙げられた物や画像からも目に見えません。
見る側も自分自身の経験や技量から出来た【ものさし】でしか判断しようがないのも事実です。
しかし、それを盾にして貶して良いとはならないんですよ。
見せる側からしたら、わかって欲しいんですよ、苦労したことを、頑張ったことを、その作品を通して。
同じ道を行く人達に、似たような経験をしたであろう人達に。
他と比べて出来が良くないとか、そんな事は作った本人がよくわかってる事なんですよ。
誰もが皆、スタートラインを同じくして始めたわけでもないし、掛けた時間も密度も、置かれた環境も違うのだから、差が出て当然なんです。
それを気付かずにあれこれとご高説を垂れるのは、無粋というものでしょう。
かくいう、私もそういう真似をする事があるので良い大人とは言えないのですけど…。
かつて私の作ったプラモを見た、
片や、粗だけを指摘して、ああするべき、こうするべきと言い、相手との差を分からせる為だけにモノを見せる大人。
片や、褒めるべき所は誉め、粗を指摘し、改善点をあげ、やがてその先に訪れる結果としてモノを見せる大人。
ひと昔前のプラモブームは消え、一時期、下火になったガンプラ世界。
プラモを題材にしたアニメの影響もあり、また盛り返したように見えますが、かつての勢いには程遠いと、ブームの中を生きてきた方からは聞きます。
私はガンプラブーム世代ではないので、当時の事はわかりませんが…ただ、緩やかに衰退していっているような気がします。
歯止めを掛けるように、昨今では模型自体が高品質な物が増え、より簡単に、より手軽に、より鮮やかに、より精密に、価格も低価格から高価格なモノまで…模型をもっと手軽に楽しめるようにメーカー各社の努力が光っていますが、いずれ限界はくる筈です。
昔に比べて娯楽の選択肢が増えたり、便利さ、手軽さなどが重要視される一因となった世の中、時間も手間も掛かり、直ぐ結果に結び付かない物が淘汰されていくのは、ある種、仕方ないのかもしれません。
しかし、本当に人気や流行りを終わらせるのは、先に述べた【無粋な人】が増え、店長のような【良い大人】が消えていくからではないかと思っています。
模型やゲームに限らず、敷居が下がり新たな新人さんが参入しやすくなったとしても、育む土壌が腐っていては、やがて終わりがきます。
そういうのは、なんだか寂しいものですね。
私もいつか、在りし日の店長のような【良い大人】に成れればなと思いました。
そして私は今日も、良いモノを見つけて【いいね】を押す。
【これは良いものだ!】
では、また次回。
Kommentare