新しい旅路、それは心踊るもの。
新しい仲間、それは心強いもの。
新しい世界、それは___
「で、君はどうしてここに居るんだい?」
「ヤダなぁ、決まってるじゃないですか。サボりですよ、サボり」
「……全く、昔はあんなに勤勉だったというのに、今ではサボりの常習犯か。悲しいねぇ」
どこかの世界、どこかの宇宙、どこかの国。
某日某所、暑い夏の日だった。
若い少年2人が、適度に寂れた喫茶店で、カウンターに持たれながら話していた。
1人は、黒くて艶のある髪が印象に残る、端正な顔立ちの学生。
もう1人は、質の悪い染色液に頭ごと突っ込んだかのような、それはまぁくすんだ色の金髪をした、マスター。
2人は友人で、何かある事にこうやって喫茶店に集まっては、取り留めのないことを話し合っていた。
どうやら今日の話題は、2人が最近熱中しているゲームの話らしい。2人とも手にゲーム機器らしきデバイスを持ち、画面を付き合わせてプレイしている。
「おっ、星13落ちた。ラッキー」
「は、またかよお前。羨ましいなぁ、俺にくれよ」
クエストの報酬に納得がいかなかったのか、金髪の少年が、デバイスを投げ出す。
硬い、木のカウンターに硬質な音が鳴る。
「だぁー、やってられっかちくしょお!」
それを皮切りに、黒髪の少年もデバイスを置き、カウンターに置いていた、コーヒーに口をつける。
すっかりと冷めていても、香ばしい香りは衰えず、旨みをしっかりと舌に伝えたようで、黒髪の少年は満足そうに溜息をひとつ。
それを見た金髪の少年が、一言。
「ゲームに入れたら、俺らこんな時間を過ごさなくても、いいんじゃねぇのかな……?」
たった一言。
なんでもないようなこの発言が、事を動かし始める……
序章『8/32』
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